医療実績
分娩件数
分娩数の増加と制限
当院での分娩数は毎年増加してきましたが、近年は病床数の制約のため分娩数の制限をしております。早々に分娩予約を締めきりご迷惑をおかけ致します。
(2006年6月神田院長就任より2017年5月までの計11年分の各年度6月~5月末までの分娩数)
過去10年の分娩数とその内訳
下の表はフリックでスライドできます
|
総分娩数 | 緊急帝王切開 | 緊急帝王切開率 | 予定帝王切開 | 経膣分娩 (麻酔なし) | 無痛分娩 (麻酔あり) | 麻酔実施率 | 無痛分娩 →帝王切開 |
2023 |
925 |
53 |
6.3% |
87 |
484 |
301 |
37.8% | 16 |
2022 |
912 |
49 |
5.6% |
74 |
545 |
244 |
30.6% | 9 |
2021 | 831 | 51 |
6.5% | 65 |
555 | 160 |
20.9% | 8 |
2020 | 842 | 51 | 6.7% | 81 |
653 | 57 |
7.7% | 2 |
2019 | 814 | 32 |
4.4% | 86 |
682 | 14 |
1.9% | 0 |
2018 | 854 | 31 |
4.1% | 103 |
703 | 17 |
2.4% | 1 |
2017 | 889 | 43 |
5.4% | 96 |
711 | 39 |
5.2% | 2 |
2016 | 882 | 56 |
7.0% | 84 |
714 | 28 |
3.5% | 0 |
2015 | 905 | 45 |
5.5% | 89 |
759 | 12 |
1.5% | 0 |
2014 | 879 | 60 |
7.5% | 84 |
713 | 22 |
3.0% | 2 |
計 |
8733 |
471 |
6.0% |
849 |
6519 |
894 |
11.3% |
40 |
当院では医療適応のある方へ無痛分娩を案内してまいりましたが、2021年よりホームページで希望者にも無痛分娩の案内を始めようになりました。現在では約4割の方が無痛分娩を希望され実施しています。
分娩方法について
少ない帝王切開率
帝王切開率の全国平均が約20%ですが、本院の帝王切開率はそれより少なく15.1%(直近10年間)です。
また、緊急帝王切開率は全国平均7.7%(日本産婦人科医会がH 26-28の約182万件より調査)ですが、当院ではさらに少なく6.0%(直近10年間)です。
帝王切開には①予定帝王切開と②緊急帝王切開の2種類があります。それらが必要となる理由は①予定帝王切開では前回帝王切開、骨盤位(さかご)、胎盤の位置異常(前置胎盤など)や、②緊急帝王切開では分娩進行中に赤ちゃんが弱ってしまう場合(胎児機能不全)や、分娩が進まなくなってしまう場合(分娩停止)、妊娠高血圧症などがあります。
不妊治療後の方や、高齢妊娠の方が増えてきており帝王切開率も上昇傾向にあります。特に、一人目を他院で帝王切開を受け、二人目以降にこちらで帝王切開を受けるという方が増える傾向があり、予定帝王切開が増えています。
直近10年間の分娩数と分娩方法(2014年1月~2023年12月の10年間)
下の表はフリックでスライドできます
総分娩数 | 緊急帝王切開 | 緊急帝王切開率 | 予定帝王切開 | 経膣分娩 | 硬膜外麻酔 (無痛分娩) | 麻酔実施率 | 無痛分娩 →帝王切開 |
8733 |
471 |
6.0% |
849 |
7413 |
894 |
11.3% |
40 |
男女比率
不思議なことに生物学的に男の子の方が多く生まれるといわれており、全国平均では5.6%、当院でも6.3%男の子の方が多く出生しています。また、男の子の方が出生体重が重いとされており、全国平均でも当院のデータでも70~90gほど出生体重が重くなっています。
下の表はフリックでスライドできます
(2009年8月から2017年9月)
|
当院出生数 |
当院比率 |
(全国平均) |
出生体重平均 |
(全国平均) |
女児 |
3286 |
48.47% |
(48.63%) |
3003g |
(2990g) |
男児 |
3494 |
51.53% |
(51.37%) |
3072g |
(3076g) |
経産婦と初産婦の分娩所要時間比率
当院で2009年8月より2017年に経膣分娩された初産婦2746例と経産婦3024例の所要時間の分布をグラフに表しています。一般に初産婦12時間、経産婦6時間と言われますが、当院でも中央値を見ますとそれより少し短く初産婦10時間44分、経産婦4時間50分でした。経産婦では陣痛が来て3~5時間で生まれる人が一番多い事がわかります。経産婦は陣痛が来ると1~2時間ぐらいでは病院に到着するようにすることを目指してもらうことが大事だと再認識される結果でした。
年齢別分娩数(2009年8月~2017年3月の累計)
年齢別緊急帝王切開率・件数
あなたが帝王切開になる確率は?
当院での初産婦と経産婦の帝王切開率を比べました。初産婦は若年者と高齢者で帝王切開が増加しており、特に初産婦では35歳を超えると年齢に比例して帝王切開率が増加していくことがわかります。経産婦では年齢を問わず帝王切開率は非常に低いことがわかります。このように、初産婦か経産婦か、あるいは年齢で帝王切開率が異なることがわかります。
(2009/8から2017/9)
不妊治療別分娩データ
遺伝学的検査(クアトロ・羊水検査件数)
当院で実施した遺伝学的検査であるクアトロ検査と羊水検査の実施数を表わしました。一方、2013年より母体血中染色体検査(NIPT)が始まり実施可能病院に紹介例も年間10~20例ほど数えます。羊水検査とNIPTは選択が二分することになりますが、検査の進歩に伴い患者様の意識も高まっているようで、当院でもそれぞれの検査数が増えてきています。
侵襲的検査である羊水検査においては一般に約1/300の確率で術後の破水や流産のような合併症が起こり得ると言われています。当院では現在まで計350例あまりの羊水検査を行ないましたが、術後の破水や流産は1例もありません。
母体の血液検査だけで高精度な検査が可能なNIPTが、近い将来当院においても始まる見込みです。
母体の転院先とその紹介理由(過去5年:2012-2016)
当院では済生会吹田病院、大阪大学付属病院、国立循環器病研究センター、淀川キリスト教病院、市立豊中病院などを中心に母体搬送を行なっています。
超低出生体重児の場合は吹田済生会、市立豊中、淀川キリスト教病院など規模が大きいNICU(新生児集中治療室)のある病院へ、また心臓の先天異常や出血性疾患は国立循環器病センター、その他消化管等の先天異常の場合は大阪大学付属病院など疾患毎に適した病院への搬送をしています。グレーゾーンの異常の場合、両方の施設で健診を受けながら、経過しだいで分娩場所を決めていくこともよくあります。
入院中の新生児の転院理由及び転院先(過去7年:2010-2016)
入院中の新生児の搬送に関しましては、新生児専用ドクターカーによる搬送を前提として疾患の種類、家族の利便性を踏まえて搬送先が決まります。大きなNICU(新生児集中治療室)を持つ病院が多数ある地域に当院が立地していることもあり、今までに搬送先が確保できなかったことはありません。
胎児心エコースクリーニングについて
昔は救命できなかったとされる先天性心疾患の新生児も、超音波検査や診断の進歩によりお母さんのお腹にいる時に診断され、専門施設での治療を早期に受けることで救命できることが増えてきました。いわゆる通常の妊婦健診で心臓の生まれつきの異常をみつけることができるか否かが、その子を救命できるかどうかの分岐点になることがあります。ここ数年我々は胎児の心臓超音波検査の研鑽に努め、出生後早急に手術などの治療を受けないと助からない生まれつきの病気の子をお腹の中にいる時に診断できるよう頑張っております。
当院の各医師と有資格の臨床検査技師3人による超音波検査チームが、早期診断をし得た胎児心疾患のリストを以下に提示します。特筆すべきは、診断困難とされる大動脈離断症や総肺静脈還流異常症(TAPVC)等が含まれていることです。特に、TAPVCは早期に見つけることで生命予後が大きく変わります。ただし3千例に1例程度と珍しい上にエコー所見が乏しいため、その9割以上は診断されず産まれて治療のタイミングを逸するので、胎児心エコー検査においてのエベレストと言われている診断の難しい疾患です。ここ数年で当院はすでに胎児エコーでTAPVC 2例を診断しており、他施設に類を見ない成果を上げています。前ページの表のとおり、過去5年で出生前に診断を受けた胎児心疾患での転院は30例を数えていますが、出生後の入院中の新生児の心疾患での転院は7年で5例だけであり、多くのケースは妊娠中に診断されていることがわかります。
当院の胎児心エコースクリーニングで診断できた疾患
- 総肺静脈還流異常症(TAPVC:2例)
- 大動脈離断症
- 大血管転移症
当院の患者様からのお手紙
ちょうど本稿を作成中に胎児心疾患を診断したお母様からお手紙をいただきましたので、許可を得て掲載させていただきます。2017年に当院での健診で胎児心疾患(総肺静脈還流異常症)と診断されたお子様が無事に手術を乗り越えられて、すくすくと成長されているお写真を拝見しスタッフ一同喜んでいます。ご連絡いただきありがとうございます。